第181回仏滅会の報告

 林 庄宏

 2月21日という記念すべき日の例会は、当初は昨年と同じく奈良で開催される予定であった。ところが、新作映画『シャーロック・ホームズ』の試写会がこの日神戸で開催されることになり、英国館のご好意でJSHC会員も招待いただけるとのことで、急遽会場は神戸市勤労会館になった次第である。映画の関係もあり席数不足になったらどうしようなどと懸念したものの、エキストラの椅子も使って丁度セーフ。

 この日の発表は充実の2件。最初は西浦 寛さんの『ホームズ物語における使用人の世界』である。事件簿に登場する執事、女中、小間使い、庭師、馬丁、猟場番人などをピックアップし、それぞれの権限や使用人の世界における彼らの位置づけについて詳しい説明がなされる。使用人の間にも厳しい階級が存在し、雇い主には馘首をたてに縛られ、それでいてその報酬たるやささやかなものというヴィクトリアン・サーバンツの苦境が思いやられる。具体的な事例として、マスグレイヴ家の執事、女中、猟番の娘の関係をめぐる3つの疑問提示がなされたが、最後の疑問「なぜレイチェル・ハウエルズは錯乱したのか」については、わかるともわからぬとも。 "It is Watson's department"という声が聞こえたりするのですが・・・・・さて。

もうひとつの発表は中尾真理先生の『再びワトスンの学歴について』である。論点の一つ目はワトスンはロンドン大学卒か否か。ロンドン大学には二つのコレッジがあったが、最初は授業を行わずコレッジの学生に学位授与だけを行う機関であった。正典の時代になると女性も含めコレッジ以外の学生にも公開試験で学位を授与することになった。当時ロンドンで医学を修める学校には、同大学以外には王立医学校、聖トーマス病院付属医学校およびワトスンの聖バーソロミウ病院付属医学校しかなかった。彼は同校で医学教育を受け、ロンドン大学では学位を取得したのである。論点の二つ目はワトスンは医学博士か否か。ドイルその他の例に照らせば、ワトスンが医学博士の学位を取得したことは十分に考えられるとのことである。

 これまで何回も繰り返し議論されたテーマでも、正典原文を読み直す度に新しい発見があるというお話が印象的でした。平賀三郎さんからは、昨年クリスマスに行かれた折の「最新ロンドン事情」報告があった。新作映画の喧伝はさることながら、アビ・ナショナル跡地やホテルシャーロック・ホームズの現況を見ると、ホームズ離れが感じられて寂しい限りとのこと。

 休憩に差し入れられた、タイムリーな「あたり前田のクラッカー」は今も健在で懐かしい味は変わっていない。ロイズのお菓子やミントのキャンディ・スティック等々・・・・・皆さんいつもありがとうございます。

 会員近況では、前日に英国館で行われたパイプのロング・バーニング大会で、関西支部の小澤 聰さんと山口敬多さんが大健闘されたという報告があった。お二人の火がすぐ消えなかったので、東京から審査員として来られていた日暮雅通さんもホッとされたことでしょう。そのほか、音楽会開催の案内、『三匹の子豚』にでてくる市場の場所はどこ?等々、会員諸氏の多才ぶりにはいつもながら驚かされます。

 幹事の私めは、直前にギックリ腰になったため夜昼が完全に逆の生活になり、この日も眠った記憶がないまま参加(例会後の試写会では轟音の中で爆睡)。思い返すと幹事だけが自己紹介を忘れる始末であり、例会の記憶もこの記録もみな朧。全部ギックリ腰が悪いのです。

 皆さん失礼しました。

(参加者)

田村 朋子   渡邉利枝子  平賀 三郎

翠川こかげ   相宅 史子   三宅 俊行

出嶋美千子  西岡 知恵   見吉 時枝

西田 千穂   小澤   聰   外海弘美子

福島   賛   中尾 真理  森田由紀子

中村喜代美  山口 敬多  木下 信一

久武 正則   真下 庄作   西浦  寛

長谷川明子  窪田 和恵   萩原 理恵

林  庄宏

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