第182回仏滅会レポート増田 健太2010年4月17日、京大会館にて第182回仏滅会が開催された。一年前に開催した京都での仏滅会よりも多い20名の参加をいただき、大変嬉しく感じた。冬も終わり世間も活動性を増したためか、京大会館の他の研修室でも様々な催しがあり、にぎやかな中での仏滅会であった。 参加者全員にて恒例のWEJの発送準備作業を行い、13時30分に開会、以下のように進行した。 研究発表「REDHの隠れた前提をさぐる」 久武正則 『ホームズ聖地巡礼の旅』の出版について 平賀三郎 参加者近況報告・情報交換 講演「ヴィクトリア朝の繁栄と安定への道」 後藤清作 研究発表「REDHの隠れた前提をさぐる」The Red-headed Leagueにて企まれた犯罪が成立するに必要な隠された前提について、演繹法や帰納法なども踏まえて、久武正則さんが発表された。 演繹法の例としてあげられたのがSilver Blazeで、「Silver Blazeの居場所がKing's PylandかMapletonのどちらかである(rule)時に、King's Pylandにいなかった(case)のだからMapletonに違いない(result)、というものである。 帰納法として引用されたのが、The Noble BachelorやThe Valley of Fearで「過去の多くの犯罪記録(case)を調べれば、今回の事件の解決に資するようなものが得られる(result=rule)」というものであった。またA Study in Scarletでの「千の過去の事件を知りつくしていれば、千一番目が予測できないはずがない」というホームズの言葉が数学的帰納法につながる部分もあるのではないかという示唆もあった。 そしてThe Red-headed Leagueの隠れた前提として、1.手堀り可能な柔らかい地盤・土質、2.人が通れるトンネル(混合式下水道)、3.高密度の下水ネットワークの三点を挙げられた。 参加者から様々な指摘や意見が出て、さらに磨いて優れた論文になる可能性が確認された。 講演「ヴィクトリア朝の繁栄と安定への道」後藤清作先生を遠方からお招きし、絶頂期であるヴィクトリア朝に至るまでの道のりを、テューダー朝やステュアート朝におけるイギリス史をひもときながら分かりやすくご講演いただいた。 大陸との断絶を経て国家に対する英国人の意識が覚醒されたヘンリー7世時代、宗教改革や修道院が解散されたヘンリー8世時代、であるテューダー朝に、現代英国のルーツは遡ることができる。そしてピューリタン革命が行われたステュアート朝の百年を乗り越えて、近代英国がたぐりよせられたと、後藤先生は語る。 1660年になされた王政復古、武力衝突なく議会による革命である1680年の名誉革命を経て、繁栄の礎を築くきっかけとなった産業革命が、さらなる生活向上への貢献となった。 講演の最初と最後には、His Last Bowでの終結のくだり"a cleaner, better, stronger land will lie in the sunshine when the storm has cleared"が引用され、ここで比較級の形容詞が使われていることからも、その当時が右肩上がりの絶頂期であったことがうかがわれるという、示唆も与えられた。 休憩時間には平賀さんの『ホームズ聖地巡礼の旅』が即売され、臨時サイン会も開催されていた。また、参加者近況報告では、福島さんが弟さんと別居されるとのことでホームズの気分だということだった。最近話題の、映画"SHERLOCK HOLMES"で、ホームズがモースタン嬢とワトスンと三人で会ったシーンを少し思い出した。 仏滅会終了後は同じ施設内にある「レストランこのえ」にて懇親夕食会を催し、京都大学と早稲田大学とで共同開発したというビールを味わう方もいて、楽しい会となったのは嬉しいことであった。 (参加者氏名) 渡辺利枝子 清水 好三 平賀 三郎 翠川 こかげ 三宅 俊行 増田 健太 西岡 知恵 見吉 時枝 小澤 聰 福島 賛 後藤 清作 後藤五百合 山口 敬多 木下 信一 山岡 斉 久武 正則 西浦 寛 眞下 庄作 林 庄宏 長谷川明子
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