第187回仏滅会報告

 2月仏滅会の会場は神戸、三宮駅に近いいつもの勤労会館である。

 例会当日(2月5日)の朝日新聞・神戸版の朝刊に、「ホームズ愛重ねて30年」という見出しで、関西支部設立30周年の記事が大きく掲載された。本日の仏滅会についてもふれてあり、紙面は前号4面にあるとおりであるので詳細は省略するが、記者の「つかみ」のうまさはさすがにプロである。

 この記事のおかげで、神戸市在住の筋金入りシャーロキアンで隠れJSHC(?)というお二方をお迎えすることになった。参加の動機をお尋ねしたが、「下調べによれば危ない会のようだが、どんな人間の集まりだか興味深々観察に来ました!」「雌伏すること25年、原文でも読みます!ホームズ本も沢山持っています」というツワモノたちでありました。

 ツワモノにはツワモノを、というわけで、最初の研究発表は、森川智喜さんによる『蛇の道は』。森川さんは京大ミステリー研究会出身で、2008年5月に『マジカルランプ・名探偵三途川理と魔法のための魔法による魔法の呪文』(ペンネーム遠井夜空)で講談社「あしたの賞」を受賞。同年12月には『ゴーストスクール・名探偵三途川理と長い長いお別れ』を発表、昨年7月には『キャットフード・探偵三途川理と注文の多い館の殺人』で単行本デビューという新進気鋭の推理作家である。(ん?! これでは単なるツワモノどころではないのではないのか)

 ミステリアスな『蛇の道は』の内容は犬でも馬でもなく、やはりヘビ。『まだらの紐』の先行研究レビューと「ワトスンの誤解」に基づく仮説の検討である。この事件では、ワトスンが事実を十分に理解しきれていないために誤解・矛盾が生じているという。twinsであるジュリアがヘレンと入れ替わり、ホームズとワトスンが躍らされて準備されたダミー解に到達し、あたかも事件解決の様相を呈する(実はジュリアの完全犯罪が成立する)といった次第。朝日新聞の見出しで言えば「著作研究」か。横丁からご隠居さんが出て来て本当かどうか分からないような物知りぶりを語るだけの単なる後ろ向き発表ではなく、先行研究をすべて乗り越えて新しい境地に進もうとするクリエイティブな発表でした。

 う〜ん、なるほど。これが京大ミス研流切り口なんだ。でも私めは、パワーポイントの残像にすら追いついていけませんでした。

 会員近況報告と情報交換、それぞれの出席者から各種のホームズ情報が紹介された。

続いて、真下庄作さんによる「最新ロンドン?事情」報告。朝日新聞の見出しでは「英国訪問」に当る。昨年11月に2年ぶりの訪英。今回の目玉はダートムア。天気が良すぎて魔犬の気配もなかったようである。見れば現地パンフレットも快晴の写真で、魔犬ファンにとってはさびしい限り。もっと不気味な霧が立ちこめていなければ。ロンドンにもどって、ロンドンSHソサエティ幹部と旧交をあたためる。場所がシンプスンとくればうらやましがるより他はない。例によってかねて御研究のテーマ、警察関係もチェックし、博物館を訪れる予定が、地下鉄のストライキでみれなかったとか。ドイルの旧家を辿るなど充実のロンドン散歩だったようでした。

 二次会は、いつも同じ店でも申し訳ないので、少し目先を変えて(?)三宮駅前の女子会専門店へ。幹事に特段の趣味があるわけではなく、例会会場近くから順々に、難しい条件を満たす店をつぶしていった結果である。しかし、長尻対策なのか2時間きっかりで強制退去。ちょっと早すぎたでしょうか。

 次回は4月で会場は京都、例年とちがって本年は寒さが厳しい。シャーロキアンも花を観る余裕が必要で、咲き具合はどうかな?と思っていたが、この報告を書きかけた時に有史以来の大地震が発生した。何が起こるかわからないものです。

(参加者)

平賀 三郎 翠川こかげ 三宅 俊行

出嶋美千子  西岡 知恵  外海弘美子

福島  賛  山口 敬多  久武 正則

木下 信一  真下 庄作  西浦  寛

長谷川明子  森川 智喜 篠田 典子

吉本 研作  林  庄宏

 

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