第188回京都仏滅会報告

増田 健太

 4月13日、春の匂いあふれる京都にて第188回仏滅会が開催された。4月は例年、会場として京大会館を利用していたが、昨年閉鎖の憂き目を見たため、今回は京都大学吉田キャンパス内にある百周年時計台記念館を会場とした。

 京大会館が閑静な医学部構内北にあったのとは一転、吉田キャンパスは京都大学の顔である正門から入ると、正面に堂々とそびえたつ時計台を目にする。その入り口付近には各部活動などの看板が並び、若い力がみなぎっていた。ちょうど桜満開の京都は観光客が非常に多く、大渋滞に巻き込まれ到着までに難渋された方が多かった。うまく花見をしてから会場に着かれた方もおられたことだろう。

 幹事の自己紹介のあと、JSHC関西支部30周年について平賀さんから説明があった。単純に計算しても仏滅会が年6回、30年で180回。今回が188回仏滅会なので、まさに絶え間ない活動であったことが、若輩の自分にも容易に想像される。以前は松下さんと平賀さんのお二人が代表者で、ご相談の上運営しておられたが、松下さんが逝去されたので数名の方に運営委員をお願いしたいとも発表された。

 続いて久武正則氏から「いろいろなホームズ」という題でご発表があった。「様々な」ホームズについての発表かと思いきや、「いろいろな色」にまつわる発表であった。波長や哺乳類の視細胞の話に始まり、正典でとりあげられた「色」を掘り下げて、いつもの博識な内容であった。発表後の意見交換から、A Study in Scarletでの”There’s the scarlet thread of murder running through the colourless skein”で言われる緋色、犯罪という意味での赤、血という意味での赤、そして”RACHE”の血文字も登場するこの作品のタイトルは非常に象徴的なものと感じられた。自身の本職である臨床検査技師は毎日血液を相手に仕事をしており、また採血で患者さんから「この血の色は正常ですか」とよく訊かれるところだが、阪急電車の色を凝血塊に譬えられたのは目から鱗であった。

 この日、特に参加されたお二人から一言いただいた。先ず『ふたり鼠』の作者としても知られる飯島一次さんは今回、東京からの参加であった。映画「シャーロック・ホームズVSモンスター」の話題にも触れられたが、いま東京では3月11日の東日本大震災の影響による計画停電によりレイトショーも行われていないとのこと。生活が不安定な状況の中からでも、参加いただけたことは幸いであった。

 なお、休憩時間に飯島さんの席の前はまるで『ふたり鼠』の臨時サイン・即売会の様相を呈した。

 また関西を中心とした探偵小説愛好会「畸人郷」から野村恒彦さんが参加された。神戸市に作家の横溝正史生誕地碑があることを知る機会を与えていただき、大変興味を覚えた。

 休憩をはさみ、各参加者から近況報告をいただいた。いずれもホームズ関係の出版物を見つけたり、木下さんは訪英された印象をお話いただき盛り上がった。

 最後に後藤先生から「歴史と魅力に富むイーストアングリア」というご講演をいただいた。Broads地方、Fens地方を中心としたイングランド東部について、ホームズ物語の舞台となった地も含めながら、歴史的な背景とともに語られるのを聴いていると、先生の深い知識を感じることができた。最近の軽薄な流行よりも「やまと言葉」を大切にされ、資料の地図も先生の手書きで、信念の人であることをうかがわせた。幹事の不手際により、質疑応答の時間がとれず、活発な意見交換ができなかったのが悔やまれる。

 日本全体が暗い顔となっている今でこそ、出来うる活動をしっかり行って日本を牽引していく時ではないかと感じた、仏滅会であった。

(出席者)

   飯島 一次  平賀 三郎  翠川こかげ

   相宅 史子  西岡 知恵  小澤  聰

   外海弘美子  福島  賛  増田 健太

   後藤五百合  後藤 清作  山口 敬多

   木下 信一  外海 靖規  久武 正則

   真下 庄作  西浦  寛  林  庄宏

   長谷川明子  窪田 和恵  森川 智喜

   吉本 研作  野村 恒彦

                      

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