第201回仏滅会報告

西岡知恵

 昨年年末に記念すべき200回を祝った関西支部例会仏滅会の、新たな歴史の始まりとなるべき、201回仏滅会がそれにふさわしく重要文化財綿業会館でひらかれた。

 例会の前には事務局長の花崎正男氏の案内で、館内見学が行われた。

 昭和初期、繊維産業の隆盛を背景に岡常夫氏の莫大な寄付をもとに作られた豪華な建造物だ。花崎氏によると世界中から集められた、現在では手に入らないような貴重な建材がふんだんに使用されているらしい。

 館内の豪華な部屋々をめぐりながら、かっての大阪の繁栄と栄華を思い浮かべた。また、この建物があの戦争での大空襲を耐え、今も有る事が奇跡のように思われた。

 例会は定時に始まり、まず、仏滅会200回記念の海外用記念品について眞下氏から報告があった。

 記念品はホームズのシルエット画像つきの箸袋に入った「ホームズ箸」で、贈られたロンドンホームズ協会、図書館その他の方々からは感謝のメールをいただき、好評であったそうだ。(画像は「一月の話題」でご覧になれる。)

 また、ロンドンの地下鉄開業から150年を祝って先日、地下鉄路線を蒸気機関車が運行したという報告もされた。

 開業当時そのままにもくもくと蒸気を吐きながら走る列車の迫力ある写真を見せていただいて、以前からの「本当に地下を煙を吐く蒸気機関車が走っていたのか」という疑問が一気に解消された。

 ホームズの物語にも登場する世界初の地下鉄は、当時のロンドンの人々にとって有用な交通機関というだけでなく、誇らしいものであったろうと思われた。

 201回記念講演は「暮らしのイギリス史」を出版されたばかりの甲南大学教授中島俊郎氏による、「『まだらの紐』における<イギリス>の住空間」であった。

 「王侯から庶民まで」という副題のつけられた本の内容から昔のイギリスの住居がどのようなものであったか、というお話をいただいた。

 「クロゼット」という場所は昔は単なる押し入れではなかった。家の中での唯一個人の占用空間をさす言葉であった。そこは個人の秘密が隠され、密談も行われる場所であったという。また、なぜ内閣が今は家具の名前である、「キャビネット」と言われるのか、というお話が興味深かった。

 ホームズの物語も含め、推理小説では「現場」となるべき家の間取りや室内の様子が重要になる。「まだらの紐」を例に当時の屋敷の実際を考察された。

 「通気口」が重要な役割を果たしているが、それはどういうものであったのか。密室殺人は可能だったのか。当時本当に起こったという宿屋での殺人事件のお話もしていただいて、あらためて「まだらの紐」のおもしろさに気付く思いだった。

 休憩、近況報告をはさんで次に現役の弁護士である、大川一夫氏から「シャーロック・ホームズとメンタリズム」というお話をいただいた。

 今、テレビなどで話題になっている奇跡のような「メンタリズム」だが、心理学や暗示などを駆使したトリックで、遥か昔から「マジック」のひとつとして利用されていたという。また、ドイルもはまった「心霊術」などにも使われた

 一目であいての事を見抜くホームズの手法もメンタリズムの利用であった。物語の中でホームズが依頼者やワトスンを驚かす読心術のようなパフォーマンスはどういうふうに「観察」されたか、というお話が興味深かった

 大川氏は、お話の中で実際にトランプを使って「メンタリズム」のトリックを披露されたり、DaiGoばりにフォーク曲げをされたりして、大変楽しい発表となった。

 今回講演いただいた、お二人には支部よりささやかな記念品として仏滅会200回記念のカレンダーとパブシャーロック・ホームズのバッチをお贈りした。

 会の後は恒例の夕食会が綿業会館地下の食堂で行われた。そしてそのあとはこれまた恒例の三次会とおおいに盛り上がったのだった。

 参加者氏名

中島 俊郎  大川 一夫  渡辺利枝子

平賀 三郎  翠川こかげ  相宅 史子

西岡 知恵  見吉 時枝  中村 哲郎

西田 千穂  小沢  聡  外海弘美子

福島  賛  吉住 琴子  宮城 秀夫

森田由紀子  山口 敬多  山岡  斉 

眞下 庄作  西浦  寛  外海 靖規

小野 功雄  森川 智喜  山田  誠

吉本 研作  藤原幸栄子  桜井 友美               

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