第203回奈良仏滅会

渡辺利枝子

 平成25年6月には仏滅の土日がなかった。というわけで6月8日(土・先負)、第203回仏滅会が奈良婦人会館で行われた。奈良の仏滅会は月は不定だが、定例になって5年目、会場を奈良婦人会館に決めたのも4回目。そのときから二次会会場もずっとチャイナダイニング飛天でやっている。予約電話を入れたら、「あ、シャーロック・ホームズさんね」と言われた。

 さて、仏滅会は恒例の発送作業を済ませ、追分フォーラムとその後夜祭(友引会)の報告をそれぞれ福島さん、新野さんから受けた。なんと群馬県にはスコットランドから分解して移築した古城(大理石村ロックハート城)もあれば、まだらの紐とおぼしきヘビを飼育する施設(ジャパンスネークセンター)もあるそうだ。関西からは遠いが一度行ってみたいと思った。

 まず、発表は平賀三郎さんの「ホームズ研究の迷路」から。平賀さんが考えるA級研究は三つあり、「ホームズの誕生日」「ワトスンのミドルネーム」それとベアリング=グールドに代表される「年代学」。これらは総合的に研究し、ウィットに富んだ結論を導いている。たとえば、ホームズの誕生日が1月6日だという根拠は『十二夜』のセリフを二回も言及されていることに過ぎない。反論は簡単だが、これに匹敵する説得力のある自説を組み立てない限り論破したことにはならない。しかし、近来の研究は顕微鏡的な話になりがちだという。例を挙げると関西支部で『最後の事件』論争が活発だった時期があるが、論点は英文解釈に限定的で、ワトスンの記述をまじめに読めばホームズの命日が5月4日ではありえないことには触れられていないことが残念だったと。長沼弘毅も『シャーロック・ホームズの紫烟』で結論を出すより過程を楽しむのがシャーロッキアンであると述べている通り、ホームズ学とは方法は学問のものを用いるが、研究対象は所詮架空の人物なのである。絶対的なことを言い出すとすべてありえないという結論しか出ない。もっと総合的な視野を持ちウィットに富んだ研究がでてほしいと研究テーマをいくつも提案された。筆者などは専門知識をホームズ物に当てはめるような研究発表しかしたことがなく、修行して出直してきますです。

 質疑応答が盛り上がったので、休憩時間を繰り上げ、翠川さんから中嶋蔵書紙上オークションの結果発表。入札品を回し、その場での入札などもあった。引き続き自己紹介・近況報告・情報交換が始まったが、関連本のみならずホームズのシルエット型ペンダントや『シャーロック』のパロディ絵本がコンビニでダウンロードできた(現在終了)など珍しいものもあり、世にホームズの種はつきまじであった。

 後半の発表は西浦寛さんから「ホームズをめぐるレディたちの世界史2 ラテン女性たちとイギリス国際経済」であった。ラテン系女性が登場するのは後期の作品に圧倒的に多く、それはイギリスが中南米に経済進出していったことを反映しているそうだ。個別にコスタリカやボリビア、ブラジル、統一後のイタリアなどの政治経済事情など解説していただいた。わけても『スリー・ゲイブルズ』のイサドラ・クラインの出身地のなぞでは議論が沸騰した。彼女はブラジル出身だが、純粋なスペイン人だと書いてある。ご存知の通りブラジルはポルトガル人の国である。整合性を付けるため、みなでいろいろな案を出すが、原文("She is pure Spanish, the real blood of the masterful Conquistadors, and her people have been leaders in Pernambuco for generations. ")に当たると打ち砕かれる。平賀さんの発表の結論「出でよ、新しいウィットに富んだ新説」と改めて感じた。どなたかよい案はありませんかねぇ。

そうこうするうちに終わりの時間になり、我々は、「シャーロック・ホームズさん」と認識されている二次会会場へと向かったのであった。

[出席者]

 渡辺利枝子  平賀 三郎  翠川こかげ

 三宅 俊行  出嶋美千子  西岡 知恵

 新野 英男  福島  賛  中尾 真理

 山口 敬多  西浦  寛  眞下 庄作

 長谷川明子  藤原幸栄子  眞鍋 由比

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