第206回神戸仏滅会報告

篠田 典子

 2013年10月6日(日)、神戸センタープラザ西館第5会議室で第206回仏滅会が開かれた。この日の神戸の最高気温は31.9℃で、10月とは思えない暑さだったが、会場は空調がよく効いた快適で静かな部屋だった。この日の発表者の東京から遠来の新野英男、地元の中島俊郎両氏も早々に到着され、会は定刻を少しまわって始められた。

 まず、平賀代表から軽井沢セミナーの報告があった。5件の発表について、同セミナーに参加できなかった出席者にもよくわかる報告をいただいた。

 その後、1つ目の研究発表に入った。新野さんの「ワトソンとホームズは何を読んだか?医学雑誌にみるヴィクトリア朝の世相?」である。「正式な医学教育を受けなかったホームズが医学に詳しいのはなぜか、どこから情報を得ていたのか」という疑問点を、原典に描かれる医学雑誌『ランセット』『英国医学雑誌』を手がかりに追究していこうというのである。

 私は文系なので、医学雑誌を手に取ったことは一度もない。『ランセット』『英国医学雑誌』とも権威ある実在の学術誌で、その説明に、目からうろこであった。特に『英国医学雑誌』2005年クリスマス号のジョーク論文「ティースプーン消失事件:オーストラリアの研究機関におけるティースプーンの置き換わりに関する長期間の観察研究」はユニークな試みであり、大いに興味をそそられた。

 医学雑誌とホームズとの関連について、新野さんは主に『白面の兵士』を例に検証された。『白面の兵士』事件発生直前の数年間に、医学雑誌にライ病(ハンセン病)についてどのような論文が掲載されていたのかを調べたのである。

 現在ではインターネットで、医学雑誌の1900年代初頭の内容も調べられるそうで、大変驚いた。論文そのものの閲覧は有料だそうだが、目次はネットで検索できるということなので、興味のある方はご覧になってはいかがだろう。

 ティーブレークのあとの近況報告・情報交換では、ちょうどWOWOWで放送されている『エレメンタリー』が話題になった。女性のワトソンということでどのような内容になっているのか、みな警戒しつつ(?)興味津々といった感じだ。また、情報としていくつかの本などが回覧された。

 2つ目の研究発表は、中島さんの「本当に犯人なのか? ホームズの犯人断定について」である。犯罪者の近代的な記録方法が確立するまでの過程と、ホームズ物語と骨相学についてお話しいただいた。凶悪犯罪者に共通する人相・骨相が研究されていたとのことで、骨相学については、4種の大変興味深い図版を示された。

 ヴィクトリア朝時代は額の形や大きさで知性を推し量っていたとのこと、これはホームズやモリアーティの描写でも顕著だが、改めて図版で見ると、いかにこの考えが浸透していたのかがわかるようである。

 研究発表後、活発な質疑応答がおこなわれ、さらに場所を移して二次会となった。

 二次会は中島さんに音頭をとっていただき、元町良友酒家という店で中華の薬膳鍋をいただいた。その場で、昨年亡くなられた成田一徹さんの切り絵が紹介された。切り絵の原図も見せていただいたのだが、精緻な細工に驚かされた。ご遺族の方は、シャーロキアンにお頒けしても良いとの意向と伺った。

 この日は会の終了後東京まで移動される方が2名おり、お忙しい中、みな熱心に参加されている様子が伝わってきた。中島さんの「秋は知的好奇心を刺激するのによい季節」のことばの通り、充実した仏滅会になった。

[出席者]

 平賀 三郎  翠川こかげ  相宅 史子

 出嶋美千子  西田 千穂  外海弘美子

 新野 英男  福島  賛  中島 俊郎

 外海 靖規  中村喜代美  西浦  寛

 小野 功雄  森川 智喜  篠田 典子 

 吉本 研作  藤原幸栄子

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