第208回東大阪仏滅会報告

外海 靖規

 2月15日(土)、新年度第1回目の仏滅会を大阪府立中央図書館会議室で開催いたしました。

 大阪市の中之島から東大阪市に引っ越して現代風のオープンな建物となりましたが、その2階が会場です。館内が広すぎて分かり難かったと迷われた方もありました。

 この日は幹事として司会を担当する予定者が急用のため、その縁者たる発表者が急遽司会を兼ねるという変則で行わることとなりました(そのために報告をまとめるにも時間をいただきました。申し訳ありません)。

最初の発表は福島賛さんの「レジナルド・マズグレイヴとは何者か?」。

 王家の秘史に迫る《マズグレイヴ家の儀式書》で描かれたマズグレイヴ家の謎に切り込む内容でした。マズグレイヴなのかマスグレイヴなのか、発音ひとつおろそかにしない考証からはじまり、準男爵家マズグレイヴ一族の姿が明らかになっていきます。

 今までのクラブでここまで調べた発表は寡聞にして知りませんが、出自、系図から居館までよく調べておられます。捜し出したお写真を拝見する限り、作品のモデルかもしれないマズグレイヴ準男爵は結構洒落男でありました。より詳細な内容につきましては、『シャーロック・ホームズ紀要』18号をご参照ください。

 四国から足を運んでいただいた中嶋さんは、関西支部草創期からの会員ですが、四国に転居後の仏滅会出席は久しぶりです。また昨年には蔵書を関西支部に寄贈していただき、必要とする会員に紙上オークションで譲り渡されたことは記憶に新しいことです。そのお礼を兼ねて司会者から紹介させていただきました。当日持参されたお土産、うどんキャラメル(!)などをほおばった近況報告・意見交換のあとは、わたくし外海靖規の発表「図書館のシャーロック・ホームズ」でお耳汚しいたしました。

 本来大人向け読み物であったホームズ物語が児童文学としてリライトされたときに、文章や内容に何らかの変更があるはずです。発表の前半は、そうした変更の中でも、特に、省かれた部分をたどることで、時代による子供観の変遷を探ろうという研究の導入を紹介。後半は中央図書館が所蔵する児童向けホームズ・シリーズの挿絵からホームズの肖像を抜出し、時代の変化をたどってみました。50年代のストランド風イラストが、70年代には抽象・幻想画系統と漫画系統に分かれ、0年代にはアニメ絵になっていくのと同時に、ホームズの見た目年齢もどんどん若くなっていくのが興味深く感じられました。

 図書館所蔵の古書も何冊か借り出して回覧しましたが、今にも表紙がちぎれそうなものも見ていただき、質疑応答や意見交換の話題も提供できました。

 発表の後は、大阪府立中央図書館の地下書庫を見学いたしました。100メートル×100メートルの敷地を埋め尽くす広大な書庫にギッシリと並ぶ書架。その間を「チリチリ」とベルを鳴らして疾走する自転車(本を集配するのに自転車を使っています)。

 一時間ほどの見学でしたが、皆さん児童文学書の棚の前で足が止まり、しばし子供のころに買ったホームズ本の話で盛り上がっておりました。

 二次会は荒本駅前の「ほうみん」で中華料理を堪能、四国や東京からの出席者を囲んで親睦と歓談のひとときを過ごしました。

 終了後、出席者のどなたかがご存知の、隣の駅のパブに繰り込み、歓談を重ねられたとも伺っています。

 次回仏滅会は4月、京都大学構内で開催されます。

[出席者]

 渡辺利枝子  中嶋  顯  平賀 三郎

 翠川こかげ  出嶋美千子  西岡 知恵

 見吉 時枝  中村 哲郎  西田 千穂

 林  庄宏  外海弘美子  新野 英男

 福島  賛  真下 庄作  西浦  寛

 外海 靖規  篠田 典子

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