第212回神戸仏滅会報告

篠田 典子

 2014年10月4日(土)、神戸市勤労会館で第212回仏滅会が開かれた。今回は幹事を林庄宏さん、副幹事を筆者が担当した。前回に引き続きやはり台風の影響が心配されたが、まずまずの天気の中で実施することができ、会には24名とたくさんの方が出席された。

 1つ目の研究発表は、藍見明石さんの「ロシア版ホームズの世界へようこそ」である。私を含めほとんどの出席者が、「ロシア版ホームズ」の存在は知っていても実際に見たことはないし詳しくは知らない、というのが実情のようだ。やはりロシア語のハードルは高く、詳しい方に解説してもらえるというのは貴重な機会である。

 写真がたくさん載った資料を用意してくださっていたので、「ロシア人が思い描くホームズや他の登場人物」「映像で使われたロケ地」が具体的に理解できた。ホームズをはじめどの人物も、ロシア版でも基本的に原典どおりのイメージである。しかしロケ地の方はどれもイギリスに似せてはいるもののロシアを強く感じさせ、大変興味深かった。ロケ地紹介については、www.221b.ruというサイトを教えていただいたので、パソコンでも見てみようと思う。当日出席しておられなかった会員の方も興味のある方はいかがですか。

 続いて、相次いで時代小説(推理物)を出版した飯島一次さんの作品について、渡辺利枝子さんから、各作品の内容の紹介と読後感のお話をいただいた(5面掲載)。引続いて有志の会員から出版を祝って記念品の贈呈が行われた。WEJ上でも紹介されているように、飯島さんは6月に『三十郎あやかし破り ねずみ大明神』を8月に第2弾の『本所猿屋敷』を出版された。席上で即売会とサイン会となりすでにお持ちの本を持参された方や当日購入した本に、飯島さん直筆のサインをいただくことができた。

 ティーブレークでは、増田さんが高知から持参された和菓子や、翠川さんがスコットランドから持ち帰ったクッキーがふるまわれ、恒例の近況報告・情報交換では出席者からさまざまな情報が提供され、新しく出版された本や各種資料なども次々に回覧された。

 後半、2つ目の研究発表は、増田匡裕さんの「やっぱり“癒やし系”だったホームズ」である。第199回仏滅会で発表された「本当は“癒し系”だったホームズ、ホームズ物語におけるクリーフ(悲嘆)ケア」の続編とも言うべきものである。「癒やし系ホームズ」と聞くと私はなんだかユルい着ぐるみを想像してしまったのだが、そうではなく、依頼人に対するホームズのコミュニケーション・スキルについての発表だった。

 増田さんは、依頼人の心を開かせるような話し方や相手のプライドを傷つけない話し方を実践するホームズの姿を、『三人の学生』『白面の兵士』などから引用し解説された。「名探偵ホームズ」としての常識外れな言動ばかり強調されがちだが、社会に適応するホームズの側面も指摘されてこそ、リアルな人物像が浮かび上がってくるのだろう。

 活発な質疑応答が交わされ、またホームズや英国に関する書籍が回覧されるなど、和やかなうちに一次会は終了した。

 引き続き二次会にも大勢の方が参加され、大変盛況な会となった。場所はすぐ近くのミント8階のスペイン料理店La Cazuelaで21名も参加された。しかし何と言っても今回は、スコットランドの独立に関する住民投票が行われて日が浅かったこともあり、この話題が会のあちこちで繰り返し取り上げられていた。スコットランドやイングランドに詳しい方も多く、ご自身の体験に基づいた話を聞くことができてとても良かった。

 そして年齢や職業もまちまちな人たちが、ホームズを通じて出会い、このように英国・文学・社会について親しく話す場が持てることに大きな意義と喜びを感じた。

 出席者は次の通りです。

  飯島 一次  田村 智子  渡辺利枝子

  平賀 三郎  翠川こかげ  相宅 史子

  増田 匡裕  出嶋美千子  西岡 知恵

  見吉 時枝  外海弘美子  西田 千穂

  眞下 庄作  林  庄宏  中山 共子

  福島  賛  森田由紀子  西浦  寛

  篠田 典子  吉本 研作  山田  誠

  藍見 明石  堀江 美穂  有村  理                                                                                

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