第213回京都紅葉仏滅会報告

西浦 寛

 2014年11月22日(土)紅葉に彩られ、外国人観光客でにぎわう京都東山で213回仏滅会が開催された。場所は、京都市文化財建造物保存技術研修センター。本来の目的は和風建築技術の研修の場であるが、空き部屋がある場合は目的外にも利用できるため会議室を利用できたものである。施設は、檜の香りがただよい、古くからの伝統建築技術の展示コーナーもあり、外観は和風建築の2階建てで、清水寺や高台寺、円山公園などに囲まれる東山にふさわしい伝統的な建物である。

 まずは、会場前に集合してから昼食会の京料理屋へ移動した。仏滅会会場から徒歩で7,8分程度歩いた二年坂にある「つぶら乃」である。和風ではあるが、まだ新しい建物で「八坂の塔」を見下ろす坂に位置している。古き良き日本を思い出すような和室に通され、見た目も味もいやされるような京料理に参加者全員賞賛の声を上げた。

 極めつけは、ちょうど八坂の塔を切り取った額縁のような窓があり、JR東日本の「そうだ京都に行こう」のCMを思い出した。

 仏滅会の開会時間が迫っていたので、あわてて京料理をいただき会場に戻る。

 WEJの発送作業を行い開会する。幹事は私と副幹事には、和歌山に咲いた一輪の花、西田千穂さんに引き受けていただいた。

 前半の発表は林氏の「移民の話」。イングランドにおけるノルマンコンクエストなどの移民の歴史から百年戦争などによるフランス系の移民の話が続いた。

 ホームズ物語においても当時のイギリス社会の状況を反映してイギリス国外から移民してきた者、イギリスから海外に移民して、また戻ってきた者など、「バスカヴィル家の犬」の主要人物ヘンリー卿はカナダ帰り、「ボスコム谷」のマッカーシー老人はオーストラリア帰りと、枚挙にいとまがない。

 今まで気づかなかった林氏によると「高貴な独身者」の結婚式に若き貴族の父親と長男が出席していないのはおかしいとの指摘があった。

 お子様方を立派に送り出した父親である林氏ならではの慧眼である。財産目当てにアメリカ成金の娘と結婚した男に親族は冷たい視線を送っていたのかもしれない。このあたりホームズ物語は掘り下げると奥が深い

 林氏はご子息たちに将来外国で働くことも視野にいれるように教育されたそうだが、これからの日本の国際化はどうなるのであろうか。

 ティーブレーク、近況報告をはさんで後半は九州大学の鬼丸先生の発表である。1914年に第1次世界大戦が始まってから本年でちょうど百年である。偶然にも林氏の移民に関する発表と関連して人、物のグローバル化とそれに付随する諸問題についてお話いただいた。

 第1次世界大戦までは国民とか国境の概念があいまいであったのに、それ以降は国家による人、ものに対する統制が厳格となり、第二次世界大戦への総力戦の時代につながっていく。アンダーソンによると近代国家は「博物館、地図、人口統計」である。まさに管理がゆきとどいた現代社会からすると古き良き時代であった。

 ホームズ物語においてマイクロフトの存在が評価されているように高度に専門化された組織では、全体像を把握できる人物が重要であるとの指摘、黄色い顔における人種差別問題の克服など現代人が直面すべき課題が、ホームズ物語の随所にちりばめられ今の世にいきづいているという結論であった。

 二次会は会場近くだが、清水寺ライトアップ見物で大混雑する観光客をかき分け清水順正に移動し、湯豆腐を味わった。

仏滅会出席者

 渡辺利枝子  平賀 三郎  翠川こかげ

 鬼丸 武士  西田 千穂  小澤  聰     

 林  庄宏  外海弘美子  福島  賛

 吉住 琴子  西浦  寛  眞下 庄作     

 外海 靖規  藤原幸栄子  堀江 美穂

 

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