第224回茨木仏滅会ご報告

藍見 明石

  

 関西支部35周年記念事業の一環である、「仏滅会毎月開催」のスタートを切ったのは、2016年7月3日(土)第224回でした。会場は茨木市福祉会館で、去年一昨年と使用した茨木市民会館のお隣です。市民会館は老朽化のため2015年末で閉鎖となりましたが、それによって「シャーロッキアンは建物をつぶす」という名誉な?都市伝説に新たな裏付けが加わったと言えるでしょう。

 224回の幹事は、当初、吾妻灯会員が務められる予定でしたが、ご都合が悪くなったため、急きょ筆者が幹事代打を務めることになりました。とはいえ、会場の手配や懇親会会場の予約などをしてくださったのは吾妻会員であり、そのご功労があってこそ、224回が成功したと言えます。副幹事を務めて下さったのは藤原幸栄子会員です。懇親会の人数確認など、素晴らしいフォローをしてくださいました。

 従来通りWEJの発送作業を終えて、224回は開会しました。先ず平賀三郎代表から「関西支部35周年事業」に関する各会員からの提案などの検討状況の中間報告がありました。「221回記念仏滅会をしたばかりなので、その二番煎じにはならないように」との貴重な意見があったとの事でした。

 最初のご発表は、外海靖規会員の「シャーロック・ホームズの図像学」です。第208回東大阪仏滅会でのご発表「図書館のシャーロック・ホームズ」を発展させ日本における探偵小説、犯罪小説の歴史をその源泉から探る興味深いご発表でした。

 世界初の犯罪小説がポオの『モルグ街の殺人』(1841)であるのは有名な話ですが、実はその20年も前にChristemeijer(クリステルメイエル)が”De Jonker vanRoderijicke”(ダ・ヨンケル・ファン・ロデレイキー)という犯罪小説を発表していたのです。しかし世に出なかった理由は、見ての通り、オランダ語で書かれていたからとのことだそうです。

 話は脱線しますが、経済学の分野でも似たようなことが起きていたのを思い出しました。1933年にポーランド人経済学者カレツキがケインズの「一般理論」と同様の内容を発表したが、ポーランド語で書かれていたため普及しなかったという歴史的事実です。世界共通語としての英語はやはり強いのですね。一方、江戸時代の日本では、蘭学の学習が盛んであり、オランダ語が普及している下地がありました。そのため蘭学者神田孝平による翻訳小説『楊牙兒奇獄』(“ヨンゲルキゴク”と読むそうです!)が流通し、のちに将軍にも献上されたとのこと。現在は原文がネットでも読めるようになっているそうで、時代の流れ、技術の進歩を感じさせました。

 ティーブレーク後の自己紹介・近況報告の時間では、35周年記念事業幹事を務められる会員諸氏から案内がありました。見吉時枝会員からホームズとワトソンが愛飲したウィスキーの再現試飲会(追分フォーラムの補習授業ですね・笑)、福島賛会員からは人気不人気作品の投票アンケート、筆者からは2017年モスクワ旅行の告知をさせていただきました。

 二つ目のご発表は甲南大学文学部教授・中島俊郎先生による「イギリス風殺人事件の愉しみ」です。先生が15年12月に上梓された同名の書籍を下敷きにしたご発表です。英国人は殺人や公開処刑などの残虐性に強い関心を示す一方、動物愛護協会が発祥した国でもあり、その二面性こそが英国文化であるとのこと。殺人を愉しむなどというて英国文化の新たな一面を知ることができました。

 また、ご著書内における「シャーロック・ホームズの最大の魅力は、強さよりはむしろ弱さにこそ宿っている。」とのご指摘により、ますますホームズ先生が愛すべき存在になりました。

 中島先生にはご発表後、関西支部より感謝の意を込めて、221回の記念品のビールジョッキを進呈させていただきました。出席者の中には、先生が何冊かお持ちいただいた著書をその場で買い求め、万年筆でサインを入れていただく方も。英国紳士を彷彿とさせるそのお姿に、女性会員からは感嘆の声が挙がっていました。

 仏滅会終了後は、阪急茨木市駅近くの、釜飯と日本酒を売りにした居酒屋で懇親会を行いました。乾杯の音頭は、当日関西支部にご入会くださった川島昭夫先生にお願いしました。しかし飲み会までもホームズ色に染めてしまうのが真のシャーロッキアン。WEJ465号の編集後記にも書かれているとおり、当日7月3日は、《ブラック・ピーター》のピーター・ケアリ船長の命日なのです。川島先生に無茶振りをお願いし、この日の乾杯は、ケアリ船長への献杯とさせていただきました。その後の懇親会、2次会が、ケアリ船長も驚きの大酒宴となったことは言うまでもありません。そこに新潟県在住の山崎準勝会員もお顔をみせていただだきました。幸いにしてどなたも銛でうたれることもなく無事にお帰りになられた様子です。

〔出席者氏名〕 田村 智子  平賀 三郎

 翠川こかげ  出嶋美千子  西岡 知恵

 見吉 時枝  林  庄宏  外海弘美子

 福島  賛  森田由紀子  真下 庄作

 外海 靖規  中尾 真理  中島 俊郎

 長谷川明子  藤原幸栄子  藍見 明石

 林  千佳  屋代 尚則  指  昭博

 川島 昭夫  山崎 準勝

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