関西支部35周年記念仏滅会のご報告

重文の図書館見学ツアー

高野 敬子

 

12月10日の第229回仏滅会は、関西支部が35周年に達した記念会で、大阪府立中之島図書館で開かれました。

 同図書館は明治37年に第15代住友吉左衛門氏の寄付によって作られたものです。西側の正面入り口には「大阪図書館」と彫られています。建物はネオバロック型式というそうで、正面の柱はギリシアの神殿のようです。本館などは国の重要文化財に指定されています。

 このように歴史を感じさせる図書館ですが、洒落た文房具を売るミュージアムショップやレストランが入っています。中之島図書館では、毎週土曜日にガイドツアーを行っていて、仏滅会当日はちょうど土曜日でした。そこで、仏滅会の開会前に希望者は受付を早めに済ませてガイドツアーに参加するプログラムとしました。

ガイドの内容はこの建物に関する説明を始め、中之島図書館が新設される際の歴史的な経緯、開館当時の様子など所要30分です。参加費が500円必要ですが、記念品(特製クリアファイル)が貰えます。近代建築巡りが好きな人にお勧めです。

 

充実の記念仏滅会

花屋敷ひばり

 

大阪府立中之島図書館は、土地・建物は大阪府のものですが、運営は民間団体に委託する「指定管理者制度」を採用しました。そのために、上記報告にもある「図書館グッス」を販売するショップや、外部の者も利用できるレストランが開かれています。

かつては正面の大階段は締め切られ、利用者は階段下の通用口からこそこそと出入りしていました。図書館員に顔を合わせると「何しにきたのか」といわんばかりの冷たい視線も浴びたものです。図書館へ行くのですから図書を見にきたのに違いないのですが・・・。

今回も、紙上オークションの出品物など荷物が多かったので、前日に搬入したところ「会場は前日午後も当日午前も利用がないので、どうぞ会場に運んでもらって結構です」とのこと、有り難くお言葉に甘え、おかげで前日に設営が半分以上出来上がりました。

当日も12時頃から開場し、受付を開始するとともに、ケイ・モランさん寄贈のオークション本の展示と追加入札の受付、関西支部kの会員蔵書交換を目的とする放出本の展示即売(1冊 150円、2冊なら 250円、3冊 300円のコーナーと、500円均一のコーナー。代金は自分でニコニコ箱に入れる)と、この日に発行した『ホームズ紀要』の研究委員会会員への配布と会員外への頒布コーナーも開かれました。

 定刻13時に林庄宏幹事から開会の挨拶と副幹事の紹介がありました。副幹事は最初は出嶋美千子さんの予定でしたがご高齢のご家族の都合で急遽欠席、高野敬子さんと西田千穂さんがよく勤めました。

 まず、関西支部代表平賀三郎さんから「関西支部の35年」の報告がありました。当日配布のWEJ 470号に記事としてまとめられているために、エピソード中心の報告となりました。

 続いて、35周年の記念品を発案し制作の労を取られた大川一夫さんから、特製ホームズトランプの披露と解説、それと真新しいトランプの封を切って手品を披露しました。よくシャッフルしたカードの山から、手つき鮮やかに2・2・1・Bのカードが現れて拍手喝采でした。このトランプには他にはないBと白紙のカードが含まれています。

 次は福島賛さんから、35周年に当って行ったベスト作とワースト作のアンケート結果が報告されました。詳しくは5面の報告をご覧ください。ここまでが言わば記念プログラムです。

 ここで関西支部恒例の研究発表に入った。最初は、特製記念品制作で活躍した大川一夫さんによる「シャーロック・ホームズと叙述トリック」である。

 まず、シャーロック・ホームズのトリックについて、トリックはいろいろと分類され、ホームズに付いても説明されているが、叙述トリックとの分類はない。これは叙述トリックという概念が確立されていなかったからだとする。

 ともすれば叙述すなわち言葉のトリックとの意味で使われることがあるがこれは違う意味で用いたものだとし、正確な解釈が説明されました。

 叙述トリックという概念の確立はかなり後とになってからなので、たとえばクリスティの『アクロイド殺し』は叙述トリックの代表作として知られるが、京大ミス研出身の作家綾辻行人氏の『十角館の殺人』などが次々と発表されて、本格ミステリの一分野として確立したとする。以下叙述トリックは密室とかアリバイとは違って、犯人が仕掛けるトリックではなく作者が仕掛けるトリックとの説を支持している。

 以下叙述トリックの論点、ホームズの叙述トリック、聖典の工夫などに論を進める。まさに、仏滅会35周年にふさわしいハイレベルなミステリー論であった。

 終了後の質疑応答や意見交換も充実したミステリ論にふさわしいものがあった。

 ここで記念撮影(外海靖規さん)を行った。インフルエンザの流行のせいか、事前・当日をあわせて8の人が欠席したのが残念である。

 そして休憩・ティーブレイクとなった。

 何人もの参加者から沢山のお菓子の差し入れがあり、その時間を利用してケイ・モラン寄贈本のオークションの最終入札、コップ片手に会員放出本の品定めなどが賑わった。10 年 20年の経歴の会員でも、手にいれ損なった本は、なかなか古書店にも出回らないものである。

 休憩後、いつもの仏滅会なら近況報告・情報交換の時間であるが、限られた時間にしては人数が多いために、遠来の会員や話題の会員を幹事から指名して何人かにスピーチしていたただいた。その中で名古屋から参加の後藤五百合さんから、以前のWEJで紹介されていた「大阪の英国風ティールーム」に開会前に立ち寄ってきたことが披露された。

 ここでオークションの開札が行われました。事前に郵送で到着したものと、当日追加入札されたものを担当の小沢聰さんが厳正に入札箱を開き、一番札を入れた人の名前が発表されました。出品 18点に対して延べ 28人が応じ13点が引き取られました。郵送入札者に高値の応札がかなり目立ち、後日郵送されました。

 続いて、中尾真理さんの研究発表「ジェイムズ・モーティマー医師の謎」に移った。

まず、ステープルトンは底なし沼に飲み込まれたのか、ヘンリー卿がステープルトン夫人と結婚してハッピーエンドで終わるのではなかったのか、舞台がダートムーアに移るとモーティマー医師は影か薄くなりほとんど登場しないとの3つを挙げて、《バスカヴィル家の犬》の結末に感じた違和感について指摘する。事実として何か曖昧で不自然でもある。

続いてジェイムズ・モーティマーとは何物かの考察に移る。肩書きはミスターかドクターかにについては従来から論点になっているがそれだけなのか、さらにホームズの頭蓋骨が欲しいとの大胆な発言や、ホームズを目の前においてヨーロッパ第2の探偵だと発言する意味など何か不可解である。これは単に場違いな発言なのか、それとも本心なのであろうか。

 そしてモーティマー医師の個性的な風貌を指摘する。どこかに似た風貌の人物を連想させる。ここでMの頭文字を持つもう一人の登場人物が登場し、具体的には表現されていない隠された真相に迫るのである。

 この研究は、聖典の記述に基ずいて考察する正当なホームズ学であり、しかもその結論は、従来のホームズ豆知識を上げたり下げたりするだけの陳腐なものではなく、大隅教授のノーベル賞ではないが、全く新しい仮説を提案している。まさにこれも関西支部35周年仏滅会にふさわしい充実した発表であった。質疑応答も活発であった。

 最後に次回幹事の森田由紀子さんから、新年2月の仏滅会の案内があり、充実の仏滅会はお開きとなった。

 

祝賀夕食会図書館内食堂で

高野 敬子

 

関西支部35周年の記念夕食会の会場は、先ほどの仏滅会の会場から徒歩5秒、つまり中之島図書館内のレストランです。徒歩5秒にもかかわらず、お店の準備が整わなくて20分近くも廊下で待つ羽目になりました。

 レストランの名前は「Smorrebrod kitchen Nakanoshima」。Smorrebrod(スモーブロー)とは、ライ麦パンの上に様々な具材をトッピングした、いわゆるオープンサンドのようなもので北欧の伝統的な料理だそうです。食事のメインは小さい黒パンの上に野菜や海老や卵がカラフルに載せられた、健康的な感じのものでした。

 レストラ入口で籤をひき、籤と同じ数字の席札のところに座るシステムです。席札は、仏滅会は都合によりお休みされた出嶋さん手作りのものです。かわいい犬の写真がついていました。

 関西支部で最古参(79年にJSHCに入会)の渡辺利枝子さんから開会の挨拶がありました。最古参とあるので年配の女性を想像していたら、若い方が出てこられて、びっくりしました。子供の頃から会に参加されているのですね。

 乾杯の発声は指昭博先生にお願いしました。指先生は当初「幽霊会員になるかもしれない」とおっしゃっていましたが、長年の会員であるかのように溶け込んでおられました。お話の中で来春に神戸市外大の学長に推薦されたとおっしゃっておられました。ご活躍お祈りします。

 会食が始まると、各テーブルとも話に花が咲き、スピーチタイムをカットして会員同士の会話を優先させました。閉会のご挨拶は、関西支部運営委員の真下庄作さんから述べられお開きとなりました、

 夕食会が終わって、図書館の外に出ると、プロジェクションマッピング(大阪光の饗宴2016)のリハーサル中で、中之島図書館の正面玄関が様々な色の光で彩られていました。その後、2次会へ行く方、大川沿いを歩いて帰る方、それぞれ中之島を後にしました。

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