第231回関西例会仏滅会のご報告

堂本誠二

 

   2017年4月16日、梅田エステートビル5階会議室で仏滅会が開催されました。会員の田村耕三さんのお勤め先の直下で、会場も田村さんがお手配くださいました。ありがとうございます。

 ここ数年は多忙を理由にろくに参加していなかった私が、なぜ幹事なのか。じつは正月、平賀議長に勧められるままにお酒を飲み干していたところ、いつのまにか仏滅会幹事の話になり、最初はやはり多忙を理由に曖昧な返答をしていたはずですが、杯を重ねるうちにまんまと籠絡――いえ、種々のお気遣いをいただき、不肖わたくしが幹事を務めさせていただくことになった次第。

 さて、本題に入ります。恒例のWEJ発送作業が早く終わったおかげで、例会は予定よりやや早くに開始。まずは見吉時枝さんから5月の追分フォーラムについて案内していただきました。研究発表に加え、ホームズ像見学、記念トランプを使ったマジックの実演、ホームズの時代のウイスキー試飲などなど、どっぷりホームズ漬けになれること間違いなし、のようです。

 次は福島賛さんによる研究発表「《六つのナポレオン》にまつわる六つの難題」を拝聴。少しは幹事らしいことを思い、事前に作品を読んで私なりに「難題」というか謎を予想していたのですが、どれも当たらず。しかし発表自体は「当たり」で、いままで考えもしなかった観点を教えていただきました。これだから例会は面白い。

 ナポレオンというと、例の二角帽を被った姿がお馴染みで、定評あるグラナダ版ホームズでも同様の造形でしたが、福島さんによれば、あの時代のナポレオン像というのは古代ローマ風で例の帽子も被ってはいなかったとのこと。疑いもしませんでしたよ、そんなこと。続いてベッポの素性、事件中の移動に関する疑問、コロンナ公の推定、黒真珠の解説と話が運び、最後にして最大の難問が示されます。いわく「石膏像からどうやって真珠を取り出すのか」。石膏と真珠の硬度はさほど変わらないため、真珠から石膏を完全に除去することも、石膏を溶かすことも無理であることが示されました。これはまさに盲点で、多くの人が見逃していた点ではないでしょうか。

少し長めのティーブレイク、参加者の近況報告・情報提供を経て、お次は中尾真理先生による「カレー料理とキュラソー・コーヒー(料理から見るイギリス海外領土)」を聴講。不思議な組み合わせですが、これも個人的に予習してきました。といっても、行きつけのバーでキュラソーを使ったカクテルを数杯飲んだだけですけれども。

 「海軍条約文書事件」に朝から「チキンのカレー料理」を食べる場面が出てきますが、朝からカレーというのは妙でないか。中尾先生によれば、カレー粉は当時すでに家庭に普及していて、「チキンのカレー料理」もチキンカレーのようなものではなく、チキンにカレー粉をまぶした程度のものであったとのこと。さらに「サリー州の空気を30マイルも吸って」空腹のホームズにはぴったりの料理であるというご指摘。これも私は意識したことがありませんでした。本筋だけでなく、こういう部分にも関心をもたねばなりませんね。

 関連してホームズのグルメぶりが紹介され、最後にキュラソー・コーヒーの話題。キュラソーというのは西インド諸島のキュラソー島に由来するオレンジ香味のリキュールで、コーヒーに入れるレシピが何種類か存在するとのこと。これはぜひ試してみたいものです(レジュメにレシピがありました)。カレー、コーヒー、キュラソーといずれもイギリスにはないもの、つまり大英帝国の版図の広さと繁栄を物語るもので、だから、ああいう論題にされたのですね。納得しました。

 例会のあとは田村智子さんがお手配くださったビアブルク梅田で乾杯。ピッチャーのビールを次々に飲み干し、楽しい一時を過ごしました。それにしても、皆さん、ホントによく呑みますね。

 

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