第233回納涼仏滅会報告

出嶋 美千子

 

 うだるような暑さにみまわれた8月5日、大阪市内堂島の中央電気倶楽部で第233回納涼仏滅会が開催されました。この?楽部ではもう何回も仏滅会が開かれているため慣れてしまいましたが、ここは会員の紹介が無ければ使用できない文化財である貴重な建物、ここに導いてくださるホームズ先生と幹事の眞下さんに感謝です。

 さて、いつもの通りWEJの発送作業を手際よく終え、最初の発表は大川一夫先生の「シャーロックホームズの推理法と弁護術」でした。先生の職業は弁護士で、その立場からホームズの推理法を―観察力、知識力、分析力と論理力、消去法、注意力―と五つに分類・一般化して、これを駆使して真実を見つけ、冤罪を防がなければならないというお話でした。なぜなら、我が国では最近まで、起訴されると99.9%有罪になったそうで、この数字は素晴らしいというより、起訴されると無実であっても(裁判で主張しても)有罪になるという現実があるからだそうです。

 先生はその推理法を具体的に説明されたのですが、観察力では、ご自身が扱った事件で些細なことから真実を発見したこと、分析力と論理力では、コリンズ裁判やシンプスン事件等を例に挙げて、数学的考えから誤った結果に陥らないことの重要性、消去法では「思い込み」をしないこと、注意力では「違和感」を感じる想像力とセンスが大切ということ言われました。

 7月に「ホームズ!まだ謎はあるのか」という本を先生は出版されました。この本には以前仏滅会で発表された論考が5編掲載されており、先生は仏滅会に感謝しているということで、参加者全員に「裁判員制度の本義」という先生著の小冊子と、関西支部35周年の記念として制作された特製トランプの裏面の「HOLMESWATSON」のアンビグラムを使った美しいポストカード2枚組をプレゼントしてくださいました。

 続いてティーブレイク、近況報告、情報交換の時間でした。それぞれ持参された本や資料が次々と回覧され、いつものことながら会員の読書の幅の広さや情報の多さに感心したり、近況に驚いたり笑いをいただいたり、貴重で楽しい時間を過ごしました。

さて二つ目の発表は平賀代表による「青い紅玉再考」でした。4月の仏滅会でも林庄宏さんがこの物語について発表され、多くの問題点、疑問点を提議されたので、別の切り口からこの物語を考えてみたいと話に入られました。

 冒頭に登場するピーターソンとは何者か?この物語の人気が上下した理由は?青い紅玉の正体は?という疑問点をホームズ学的に考えるということでした。この物語だけでなくほかの作品でも、1編だけ読めば「面白かった」で終わる作品でも、60編全体を通して考えれば内容におかしな点が多々あることがわかる。それを科学的、文系アナログ人間的視点から筋の通った解釈を見つけ出すのがシャーロキアンの楽しみなのだそうです。

  

戻る

inserted by FC2 system