237回関西例会仏滅会のご報告

堂本 誠二

2018年4月8日、クロスパル高槻にて仏滅会が行われました。記憶するかぎりでは高槻市での開催は初めて、そしていま気がつきましたが、昨年4月の例会幹事も私が担当していました。ん?年間スケジュールに組み込まれつつある!?

 桜の見頃はとうに過ぎていましたが、ありがたいことに好天に恵まれました。当日の天気と幹事の日頃の善行に因果関係がないことは承知していますが、少なくとも幹事としては「お足元の悪いなか……」という挨拶をせずに済むわけで、気分が良いものです。早めに会場入りしてくださった方のおかげでWEJ発送作業が滞りなく終わると、開会の挨拶もそこそこに研究発表のスタート。この日はできるだけ質疑応答に時間をとりたかったので、やや駆け足進行です。

 最初の発表は、川島昭夫先生による「なぜベイカー街か?」。ベイカー街が舞台になっていることはシャーロキアンならずとも知っていますが、ベイカー街が拠点になった理由と言われると、うまく答えられない方が多いと思います。そもそもこういう問い自体、いままでになかったものですよね。ホームズ物語のあら捜し、もとい整合性ばかりを追っていては出てこない着眼点であり、ホームズ物語にはまだまだ問うべき余地があることを教えてくれるテーマ設定です。

「講義中にネタがなくならないように、いつも予習だけはしっかりしている」というお言葉どおり、この日も盛りだくさんの内容で、221というのは番地ではなくhouse numberであるといった基本的な事実から、日本ではほとんど知られていないであろうベイカー街とドイルの関わりまで、

約2時間にわたって解説していただきました。

 ドイルはベイカー街を生涯一度も訪れたことがなかったという説に対しては、数々の証拠をもとに、ドイルが15歳の時にベイカー街を訪れているはずであること、その頃の経験が初期作品に少なからず反映されていることが論証されました。

 ドイルの手紙や係累との関係から、若き日のドイルの様子や行動範囲を推理する手腕はじつにお見事で、テーマ設定や入念な準備を含め、個人的に教わることの多い発表でした。

 1回目の発表が終わったあとは、通常ならティーブレイクと自己紹介・近況報告になるのですが、今回は駆け足進行のため、順番を前後して見吉時枝さんによる研究発表「ホームズとワトスンの愉しんだウイスキー」をさっそく拝聴。

 見吉さんの発表も入念な準備がされていて、しかも〈総まとめ〉ですから、本来なら十分な時間を差し上げるべきなのでしょうが、見吉さんのご厚意に甘えて短時間で済ませていただきました。

 聴講者が居眠りをしないようにとの配慮から、ビンゴゲームを伴うにぎやかな発表になり、退屈どころか、皆さんいつも以上に集中していたようです。時間の都合でレジュメへの言及はほとんどありませんでしたが、週1でバーに通う私にとっては興味深いもので、いい勉強になりました。

 見吉さんの発表が終わった時点で残り時間は30分を切っていましたので、恒例の近況報告はやめて、今回初参加の小鶴るりさん、木下京子さん、植松さんによる自己紹介。お三方とも入会される予定だそうで、嬉しいかぎり。

 続いて、中尾真理先生の新著『ホームズと推理小説の時代』(ちくま学芸文庫)の出版お祝いとして、トカイワインの贈呈。本書は関西支部での発表や『シャーロック・ホームズ紀要』の論文などからなるもので、仏滅会の活動から生まれた本です。記述は論文調ですが、中尾先生の優しい語り口がよみがえります。ぜひご一読を。

 最後に、奇しくもこの日が結婚記念日である私たち夫婦も、お祝いとしてワインをいただきました。ありがとうございます。

 まだまだ書き足りないのですが、紙幅が尽きました。次回も楽しく語り合いましょう。

 

 

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