第239回納涼仏滅会報告

     出嶋美千子

 

 8月4日大阪市内堂島の中央電気倶楽部で第239回納涼仏滅会が開催されました。ここは文化財である貴重な建物、8月はここと決まった感がありますが、何回来ても飽きない建物です。日中は外出はしないようにと言われるような酷暑の中、多くの方に集まっていただきまずは安心しました。受付時には、平賀三郎さんが共同執筆された、イギリスの48の田園風景を紹介する「田園のイングランド」という本が販売され、すぐに完売する人気でした。

 さて、いつもの通りWEJの発送作業を手際よく終え、最初の発表は大川一夫さんの「シャーロック・ホームズと羽生善治」でした。小さいころから大の将棋ファンの大川さんの職業は弁護士で、その関係から羽生竜王の講演を聞き、一緒に食事をするという機会があり、以前からホームズと羽生竜王の思考法が似ていると考えていたので、まとめてみたということでした。

 プロ棋士には一般人にはない能力(記憶力等)が有るが、羽生竜王ははるかに他の棋士を凌駕していると、その能力と偉業を説明されました。史上三人目の「中学生棋士」になるなど天才中の天才で、しかしその生き方は、世俗(目先の勝利・金銭)にとらわれず、常に真理を追究し、研究家・芸術家でもあるなどホームズと非常に似ているのだそうです。 

 次にホームズの思考法(観察力、知識力、分析力と論理力、消去法、注意力)を説明され、羽生竜王も同じであると話されました。特に、「思い込み」はしないこと、「ない」ことに着目することはホームズをホームズたらしめ、羽生竜王を羽生竜王たらしめる思考法であるということでした。

 大川さんが羽生竜王に会われた時、ミステリーは読まれるのでしょうかと質問したところ、中学生の頃はよく読んだそうで、シャーロック・ホームズも読んだと言われたそうです。なにか嬉しく感じました。

 お茶と会員差し入れのお菓子で休憩し、近況報告、情報交換の時間に入りました。いつものことながら会員の読書の幅の広さに感心したり、情報の多さに驚いたりと貴重で楽しい時間でした。

二つ目の発表は、中尾真理さんの「《四つの署名》とインド」でした。《四つの署名》は《緋色の研究》に次ぐ第二作目のホームズ作品で、インドで起こったセポイの反乱(最近は「インド大反乱」というそうです)が背景になっています。中尾さんはなぜインドが取り上げられたのか、そして推理小説は現実を書いているかが重要だが、それはどうなっているかと話に入いられました。

この物語は、オスカーワイルドと競って書いたもので、当時、大英帝国という王冠に輝く宝石と言われたインドを書くことで注目を浴びたかったそうです。そして、インド支配の中心となった東インド会社とその軍隊、イギリス国王軍、を取り上げて、モースタン大尉、ショルトー少佐、ジョナサン・スモールがどちらの軍隊に属したかを原文を読みながら説明されました。セポイ(東インド会社のインド人傭兵)に年金があったという話は大変興味深かったです。そして最後は、インドからはるか離れたアンダマン諸島での囚人警護にあたるインド軍勤務の将校達の過酷な勤務の様子はロンドンの繁栄の裏にあるインド統治の真実が垣間見られると締めくくられました。

終了後はすぐ近くのサントリービアガーデンで懇親夕食会を行い、少し涼しくなった(でも暑い)風にふかれながらジンギスカンで楽しい時間を過ごしました。ビールを片手に、なにわ淀川花火大会の花火をビルの谷間から見ることができ、最高の納涼になりました。

 

 

 

 

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