第243回大阪仏滅会報告

眞下庄作

 

満開の桜とダブル選挙の真っ只のなか、平成最後の仏滅会は、《最後の事件》が起きたとされる1914年に創設された電気?楽部の由緒ある「近代化産業遺産」の建物で、副幹事の木下京子さんのお世話になり開催された。

最初の発表は、語学に詳しい長谷川明子さんの国シリーズといえる「ホームズ物語とドイツ」で、ホームズ学入門のきっかけは、ホームズが、事件簿に登場する多くの事件を解決する際に、各国の言語を理解し、言語学者らしいところに惚れ込んだということで始まった。

まず《ボヘミアの醜聞》を取りあげられ、匿名の手紙の分析で、動詞の位置が文章の最後にくる文書の組み立て方が変で、ドイツ人であるという推理が面白かったこと。

王様は誰か?「ボヘミア」という言葉の魅力?で、エドワード皇太子以下4人の名前と森鴎外などの小説や宝塚演劇、映画などに登場し、ホームズの気ままな性格もボヘミアンではないだろうか、と。

次いで《四つの署名》のゲーテの作品、《緋色の研究》など3作品にドイツのロマンチックな詩や音楽作品が溢れていて、これまた面白い、と指摘された。

19世紀末のイギリスとドイツとの危機、覇権争い、ドイツ人の登場する5作品のうち《技師の親指》でホームズ似の人物の登場、《最後の挨拶》でのドイツ人の英語の発音について聞き取り易い、とも。最後にホームズのスパイ像を、元スパイのグレアム・グリーン等の活動と作品を取り上げられ前半が終了した。

ティーブレークと会員の近況報告と情報交換の時間に進み、追分フォーラム教頭見吉時枝さんから5月4〜6日開催の「追分講演会・田中喜芳他提供のミニ展示会」の案内があった。

後半の発表は、英国史に詳しく、豊富な資料で定評のある川島昭夫さんの「今日は、十五世紀の以降のことは何も見ていない‐ホームズと尚古癖(アンティクァリアニズム」である。

いきなり、題名の事件簿名は?の問いかけに、《金縁の鼻眼鏡》と答えられた人が二、三。1938年の菊池武一から2016年の駒月雅子までの文庫本《金縁の鼻眼鏡》、オンライン9編で原文の…rolling up the palimpsest… it is nothing more exciting than an Abbey’s accounts dating from the second  half of the fifteenth centuryに注目され、羊皮紙、面白い等の和訳で、詳細説明後には、「悪訳もあり、正解訳は無い!」と手厳しい。

約1m四方のインデント付鵞ペン書古文書の羊皮紙が回覧され、これまた全員が驚く。

  アンティクァリアニズムで《三人の学生》の勅許状の研究は歴史の研究であり、《バスカヴィル家の家》の書類の年代鑑定では、ホームズは玄人である、と。アンティクァリアニズムとは?ではOEDのAntiquary−3に注目され、特徴や歴史を16〜19隻末までの変遷、1849年のThe Quarterly Reviewにみる考古学、歴史学への貢献、近代の「科学」としてアカデミズムの中へ成立するまでを詳しく解説された。

 《マズグレーヴ家の祈祷書》のarchaeologist、《悪魔の足》のsomething of an archaeologist、《バスカヴィル家の犬》のantiquarian,《ガリデブが三人》のa case of ancient coins,などでホームズは、最新情報を取り入れ、《悪魔の足》でold-world village, earth-worksなどを講釈するなど、ホームズは立派なAntiquaryである、と。

《バスカヴィル家の犬》ではダートムアのstone-hutが1897年のLife in Early Britenの入門書の付録でVillagesが掲載され、ステープトンは博物学者、モーティマー医師も熱心だし、フランクランドは奇人などなど、講義は持ち時間を過ぎても続く・・・。あとはWEJや紀要に掲載されることを期待して、やっと終了した。

懇親会は倶楽部内でお酒と話で盛りあがり、次回、令和元年6月の神戸仏滅会を楽しみに

 

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