8月の話題

『ホームズおもしろ事典』発行される。

 

 平賀三郎さんを編著者として、関西支部会員多数が共著者として寄稿している、『ホームズまるわかり事典』『ホームズなんでも事典』の第3弾『ホームズおもしろ事典』が8月20日に東京の青弓社から発行された。

 同社のキャッチフレーズによれば「事件簿の奥の奥まで読み込み、その背景にある歴史や文化を語り尽くす。さらに、事件簿の地を訪ね、映像作品で名探偵の活躍を堪能。新しい発見と論旨に基づく項目でホームズの世界の醍醐味を解説する、物語をますます楽しむための事典」とある。

 内容は、前号からの中島俊郎、中尾真理両大学教授による文学的含蓄の深いエッセイをはじめ93項目で、3作合わせ300項目近くになった。

 また、福島賛、花屋敷ひばり、木下信一、眞下庄作、鈴木利男、翠川こかげ、久武正則、後藤清作、曽根晴明さんら前巻に引続いての多士済々の執筆者に加えて、香里円、本田翔、前田宣、渡辺峯樹、佐々木一仁、熊谷彰、和田順兵、長谷川明子、東海晴朗、荒戎恵比寿各氏といった新しく寄稿した執筆者がそれぞれの才能と研究成果を世に問うている。

 注目されるものとしては、当時の婦人の服飾事情に関する「アイリーン・アドラーの嫁入り支度」(香里円)、ホームズの推理法をめぐる論理学である「アブダクション」(本田翔)、モーティマー医師がヨーロッパ第一の探偵だと推した「アルフォンス・ベルティオン」(前田宣)、当時の所得を論じる「依頼人の収入に敏感だったホームズ」(渡辺峯樹)、「イングランド銀行」などエコノミストの佐々木一仁さんなど木下信一さんによる一連の映像作品を論じたものなど枚挙にいとまない。また「旧ソビエト連邦のホームズ」(木下信一)には、うわさのモスクワの英国大使館脇のホームズとワトソン二人像が初お目見えしている。

 長谷川明子さんの一連の寄稿、中尾真理さんの「T.S.エリオットとホームズ」、中島俊郎さんの「養蜂家ホームズ」も見逃せない。

 関西支部に参加し、仏滅会に出席した者はすでに発表として聴いたものもあるが、それが本人によって文章化され、磨きがかかっており、研究発表が少なくなったJSHCの全国大会でも聞けない水準のものも少なくない。寄稿者の層の厚さがよく表れている本である。

 A5版  257ページ  本体2000円

 

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