10月の話題

『ホームズの不思議な世界』を出版

会員共著の書き下ろしホームズエッセイ本完成

 10月21日に、関西支部に集う会員共著のホームズエッセイ本である『ホームズの不思議な世界』が、東京の青弓社から出版された。

 先に、『ホームズまるわかり事典』『ホームズなんでも事典』『ホームズおもしろ事典』の3冊の、ホームズの世界を縦横に探索する最新の研究に基ずく項目別の「読む事典」を出版していたが、こちらは、ホームズをこよなく愛するシャーロキアン7人によるエッセイ集である。

 編著者の平賀三郎さんは、この本の企画について「まえがき」で次のように言っている。

 柳の下にドジョウを3匹育てたが、本書では、少し目を転じてホームズエッセイ集を目指した。ご高尚の通り Essayには、随筆の意味とともに小論文の意味を持つ。つまるところ本書は、ホームズを愛するシャーロキアンが楽しんで書いたエッセー集である。

 同じく、採録されている作品と共著者の横顔も紹介されているので、これも引用しておこう。

★中尾 真理「千駄ケ谷のシャーロック・ホームズ」

英国庭園に通じ、ジェイン・オースティンを研究する英文学者が、ホームズ愛好家として楽しく書いたエッセー。ホームズへの愛情にあふれている。

★福島 賛「ソア橋の難問」

大学院では原子物理を専攻したが、凶器喪失のトリックの草分けである《ソア橋》のトリック成立の謎をシャーロキアンとして物理的に究明する。

★長谷川明子「ホームズの事件簿と比喩表現」

英語学を専攻する元フルブライト留学生。専門の比喩表現論をホームズに応用し、ホームズの比喩やその翻訳文を楽しく吟味している。

★眞下 庄作「ホームズとボーイスカウト」

文献研究に巧みで、ボーイスカウトの教本中にホームズが多数引用されている ことに注目し、当時の世相のなかでボーイスカウト運動が起こった事実を紹介する。

★森川 智喜「《マザリンの宝石》を書いたのはXXXであった」

京都大学ミステリー研出身でミステリー作家の道を歩む新進。《マザリンの宝石》が、ほかの大部分はワトスンの筆なのに、三人称で書かれているその謎に挑む。

★大倫 敦子「ホームズ時代の英国首相」

社会科の高校教師だが、なぜか世界史の授業ではヴィクトリア朝英国に力が入る。本書ではホームズの時代の英国首相をシャーロキアンの目で眺めている。

 以上に、編著者平賀三郎さんの「スイス・ホームズ聖地巡礼の旅」がトリを勤めている。

 特記すべきは、中尾さんのエッセイは書き下ろしであるが、福島、長谷川、森川、大倫さんの作品は関西支部仏滅会で発表されたものを著者がまとめたもの、真下さんの作品は追分フォーラムで、平賀さんのものは追分フォーラムと仏滅会で発表されたものをまとめたものである。これらが本になっていることは、仏滅会や追分フォーラムの発表のレベルの高さを物語っている。

 表紙も難問に挑むホームズの姿、まさにホームズの、奥深く謎の多い世界を探索し、その不思議に迫る本である。 B6版 234p 本体1600円

 

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