11月の話題 

少し騒がしい本年の11月

 

 毎年11月は、3日の文化の日、23日の勤労感謝の日が、秋晴れに恵まれ紅葉も美しい季節である。追分のホームズ像の後ろには初雪を頂いた浅間山がそびえていることだろう。

 

 美しい日本の秋である11月の休日は、なかなか筋が良い。3日はかつて「明治節」と呼ばれ、明治天皇の誕生日を記念していたものであった。現在ではこの日に日本国憲法を公布した日(施行日は5月3日)で、文化の日と呼ばれる。読書の秋であり、我々シャーロック・ホームズを楽しむ文化団体としても意義深い。

 23日はかつては「新嘗祭」と呼ばれ、新穀の収穫を喜ぶ日、いわば収穫祭、宮中で祭事を行なった。現在では勤労感謝の日とよばれるが、基本的には意義は変わっていない。天高く、馬も肥え、夜長に読書といった秋のはずが、本年は少し騒がしい。

 

 某国がICBMを打ち上げた。高さ4475kmに達したというが、ホームズ旅行のため英国へ向かう飛行機の高度は約10km、とんでもない高度で、上に打たず斜め横向けに打つと米国に核爆弾頭を落とすことが出来るという。

 大相撲の横綱が宴会で後輩力士に暴力をふるい、責任を取って引退した。礼に始り礼に終わる国技であるが、先輩の手荒なしごきなのか、後輩力士が先輩に礼を失したところがあったのか、相撲道にはなじまない。

 世界各地で、同じ宗教を信仰する者同志が教義の解釈が異なるのか勢力争いなのか殺し合い、破壊を繰り返している。どうも背後に政治的な対立がありそうだが、無関係な第三者・住民を巻き込むことがゆるされるのだろうか。

 権力者の意向を察してお役人が仕事を歪げて国有地を大安売りし「忖度」などとの言葉が流行語になった。日本を代表する大会社が軒並み品質データを改ざんするのももっての外、日本の大学の実力や学生の学力も低下し、世界のランキングの中で年々その地位を下げている。どうも騒がしい。

 

 ホームズは《海軍条約文書事件》で、有力者の学業成績は良い子弟が、情実で外務省に勤務し、昇進もしていたが、学生時代「おたまじゃくし」とのニックネームがつけられていたとおり、頭デッカチでも仕事はできず、精神的にも軟弱な男が登場する。その事件での出張の帰りにロンドン郊外を走る汽車の窓から寄宿学校の建物をながめ、「なに灯台さ、未来をてらす灯火だよ。あれはまるで小さいが元気な種子をつつんだ莢さね。あのなかから、よりよき、より利口な未来のイギリスがとびたつのさ」と述懐している。当時の英国では、ごく少数の有名パブリックスクールや大学に通った者以外の国民の大部分の教育レベルは低く、大国として教育に力を注ぎ、任用も実力主義で行なう必要が指摘されていた。

 

 《花嫁失踪事件》は、気位だけ高い公爵の次男が、アメリカから来た花嫁に逃げられてしまった事件である。ホームズは逃げた花嫁とアメリカから追って来た新郎と会食し「私はアメリカのかたにお目にかかるのが大好きなのです。と申すのは私もまた、われわれの子孫もいつかは愚かな君主や失政だらけの大国から解放されて、世界的に大きな一大国家の市民となる日が来る、しかもその国家はユニオンジャックと星条旗の組み合わせたものを国旗とすることだろうと信ずる者の一人だからです」と述べている。

 

 その後の英国は、ドイツとの確執が強くなり、第一次大戦ではずいぶん苦戦を強いられた。どうもホームズは、探偵の仕事を通じて社会の問題点を察していたのだろう。内外の諸問題が見えていないのであろうか。

 

 

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