10月の話題

 10月10日は我が国の天候では特異日と呼ばれる。古来この日は晴天に恵まれ、学校行事では

運動会や遠足に最適とされた。国民の祝日として「体育の日」がこの日に定められた。

 そのために、兄は中学校、妹は小学校といった家庭では、同じ日に開催される運動会で親はどち

らを見に行こうかと悩んだとも聞く。

 日本で前回の東京オリンピックが開かれるに当って、迷わずこの日に開会式が行われた。当日は

晴天に恵まれ、オリンピックスタジアムの上を七色の煙を吹き流して飛ぶジェット機も、聖火リレ

ーの最終走者が聖火を点灯するのも印象深かった。《白銀号事件》で到着した日の夕刻からロンドン

に帰ると言い出したホームズが「おかげでダートムアの美しい空気をしばらく呼吸させていただきま

した」と挨拶しているが、もしホームズが前回の東京オリンピックの日に会場に居たとしたら「さす

が特異日で、良い天気の中でさわやかな空気を呼吸させていただきました」と言ったことだろう。

 ところが今回準備中の第2回東京オリンピックでは、酷暑の中でオリンピックを行う日程に決り、

マラソン競技は早朝にスタートするなどの対策を検討しているそうである。噂では大口のTV放映

料を負担してオリンピックを支える米国のTV会社と、TV中継を観る人口としても最大規模の米国

人を忖度したことが日程決定に影響したとも聞く。主催国の事情や酷暑の中で競技する選手の都合は

二の次となったのであろうか。

 最近、競技者がスポーツマンシップよりも順位にこだわったり、有力者が成績判定を歪めたり、

あまり感心しないケースも耳にする。そもそもスポーツは、政治や商業には支配されず、選手のひ

たむきな努力によってフェアな技を競うところに魅力があり、人々を熱狂させ、支持されるのである。

 ホームズなら最近のスポーツ界を観察して何と言うだろう。

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