12月の話題

 

充実した発表が続いた2018年の仏滅会

 

 2018年の関西例会仏滅会は、予定どおり6回開催された。会員の発表は12編、いずれも内容が高く充実した研究で、単に探偵小説を謎解き、トリックの面白さで読むだけではなく、いろんなテーマについて長沼本や鈴木幸夫本で知った、欧米のセンス豊かなシャーロキアンによるホームズ学と呼ばれる楽し研究活動を追ったものが揃っている。1年を振り返れば次のとおり。

○第236回・大阪(2月4日)

 「トリヴァは何しに日本へ? グロリア・スコット号を深読みする」外海靖規

  ホームズはトリヴァ老人が日本に行ったことを見破っているが、その根拠を明らかにする研究

 「シャーロック・ホームズの演繹学と総合」太田 隆

  論理学の見地から、ホームズの推理法面が論理学の王道である演繹法に基づいていると説明

○第237回・高槻(4月8日)

 「なぜベイカー街か?」川島昭夫

  ホームズの下宿が「何故ベーカー街であったのか」との今まであまり問われたことがなく、

なかなか答えが見つかりにくい問題について解説

 「ホームズとワトソンが愉しんだウィスキー」見吉時枝

  仏滅会と追分フォーラムでここ数年連続して研究し、見吉さんの「習作」となっているスコッチ

ウィスキーに関する詳細な研究の総仕上げとも言うべき発表

○第238回・神戸(6月2日)

 「Sherlock Hoaxの研究」吉本研作

  題名が「Holmes」ではなく「Hoax」なのにご注意。ホームズのスケッチ画、ホームズのバイオリン

演奏のレコード、万能薬スネークオイル、実用養蜂便覧の写真など豊富な蒐集品を次々と披露

 「捕鯨とシャーロック・ホームズ(1)」中島俊郎

  コナン=ドイルが乗船した捕鯨船について、どのような思惑で乗船したか、どんな体験をし、どのよう

に作品に活かしたかについて、航路についても解明

○239回・大阪(8月4日)

 「シャーロック・ホームズと羽生善治」大川一夫

  羽生善治の思考法、一般人にない記憶力などの能力を説明し、世俗にとらわれず常に真理を追究し、

研究家で芸術家であるところなどホームズと似ていると説明。

 「《四つの署名》とインド」中尾真理

  セポイの反乱を背景としたストーリーで、当時の現実について詳しく調べて、今まであまり研究対象

となっていなかった部分、インド統治の真実やアンタマン諸島について研究

○第240回・奈良(10月6日)

 「銀星号を追って」福島 賛

  シルヴァ・ブレイズが走った競馬場はウィンチェスターではないとして、本当に走った競馬場は

どこかをプルマンカーで帰路にクラパムジャンクションを通過したとの記述を手掛かりに究明

 「ホームズ物語とフランス」長谷川明子

  事件簿中のフランスをピックアップして解決。祖母がフランス人だけあってホームズはよくフランス

語を使っているが、フランスミステリ史を語る。ただフランスの探偵はメグレのような努力型が多い

○第241回・神戸(12月2日)

 「マスグレーブ家の儀式書の謎」指 昭博

  イギリス王、スコットランド王の王冠の画像を映写し、中世の王様はいくつも王冠を持っていたことを

紹介、マスグレーヴ家の地下倉庫にあった王冠についても、どの王のものか三つの可能性を提起

 「モリアティ教授の死体を追って」平賀三郎

  現地を詳細に調査し、滝とその下流部分で死体がみあたらないはずはなく、ホームズの「ほかのあらゆる可能性がすべてだめになったなら、いかに有りそうもない事も残ったものが真実」との言葉を引用

 十人十色という言葉があるが、仏滅会は六回開かれたので十二人十二色、それぞれの機知、学識、センスをフルに傾けての研究の発表があり、いずれ劣らぬ労作ぞろいであった。

 なお、文化団体の活動にふさわしく、2月、6月、8月の会場は重文の建物、12月は大学の221号教室と会場の選択も真面目な遊び心が感じられる。外部からの学識経験者を会員に迎え入れ、また内部の会員の育成をはかって来た成果が、この2019年の実績として現れたものである。欧米の翻訳された研究など

 

 

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