18年7月の話題 

 大川・中尾両会員の出版記念会を開く

 

関西支部仏滅会でのここ数年の研究発表をベースに、多くの実績をまとめて、大川会員は『ホームズ! まだ謎はあるのか?』を2017年7月に、中尾会員は『ホームズと推理小説の時代』を2018年3月に上梓された。

 大川会員は、ホームズの推理法を現実の弁護術に応用するについて

 1 徹底した観察力

 2 犯罪事例に関する膨大な知識

 3 分析力―演繹法

 4 消却法

 5 注意力

の5つを挙げる。この辺りは至極真面目な本である。ところが第一部の扉を見ると「シャーロック・ホームズの推理法とは」の「は」が斜めに植字されている。同様に第二部「影響論」では「響」の時が横たおしになり、第三部「トリック論」の「ッ」は逆立ちし、第四部「パスティッシュ」では「ィ」の時が斜めになっている。これは決してミスプリントではない。

 以上のとおり知的でハイレベルな内容を論じているが、楽しんで本を作られた様子がうかがえる。遊び心に敬服の他はない。

 一方中尾会員の本には、優れた推理小説論として、高橋哲雄『ミステリーの社会学』、廣野由美子『ミステリーの人間学』、丸谷才一『快楽としてのミステリー』を挙げている。高橋については「ミステリというイギリス特有の気晴らし文化」を、廣野は英文学者の立場から英文学の一角を占める古典的探偵小説を精密に読んだもの、丸谷は、ミステリ―を快楽として読むぜいたくについて悠然と誘っている、とする。そして丸谷の名言「ホームズ学はもともと学門のパロディである」との言葉を引いている。

 弁護士、大学名誉教授の職にある知識人が、名探偵ホームズを遊び心十分に取り上げ、独自の判断で書き下した本、これぞシャーロキアンの著作と言うべきである。

 このお二人を囲み、出版記念会学校東は群馬、北は新潟、西は福岡から駆けつけた36名が京都東山の料亭で楽しいひととき席を共にし出版を祝った。

 シャーロック・ホームズクラブも大人になったものである。

 

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